サッカーでは認知・判断・実行のプロセスが重要
ジュニアサッカーの練習風景を見るとドリブルや1対1の対人練習に多くの時間を割いているチームが多いですが、それだけでは試合でサッカー使える技術にはなりません。
サッカーではフィールド上に22人(ジュニアサッカーでは16人)の敵味方が入り乱れるカオスの中、周りの状況を「認知」して、最適なプレーを「判断」、持っている技術を使って「実行」する力が必要になります。
つまり「実行」の練習だけしていても事前の「認知」と正しい「判断」の力を付けなければサッカーの試合では活躍できません。練習では上手いが、試合では目立たない選手の多くは、この「認知」と「判断」の力が備わっていないと考えられます。
海外サッカーでパスを受けようとしている選手の行動を見ればわかりますが、とにかく事前に首を振って周りの状況を把握しています。観戦中にボールだけを追うのではなく、ボールを受ける人が何をしているのか?を見ることで大きな気づきがあるはずです。
教えないスキル: ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術 (小学館新書 せ 4-1)首を振って何を見るのか?(把握するのか?)
状況を「認知」するには首を振って周りを見る必要がありますが、その際に把握するべきことは「味方の位置」と「相手の位置」、「スペース」の3つになります。
味方のポジションの認知
味方の位置を認知することで、攻撃時であれば「どこにパスを選択できるか?」「どこにチャンスがありそうか?」を事前に把握をすることができます。味方の位置が認知ができていればプレー・判断のスピードが格段に上がります。また、複数の味方の位置を把握できていれば狙ったプレーが1つ抑えられたとしても、別のパスコースや選択肢を選べるため落ち着いたプレーが可能になります。
守備時であれば味方の位置を認知することで、自分がどのスペースを埋めるべきか?今どのポジションを取るべきか?を正しく判断することができます。
TACTICS VIEW ~鳥の眼で観る一流サッカーチームの戦術事例~相手のポジションの認知
当たり前の事ですが味方だけでなく相手のポジションも認知する必要があります。味方と相手の状況を認知できれば、どこで数的優位が作れそうか?(守備時であればどこが数的不利になりそうか?)ポジションのズレによるチャンス(ピンチ)はないか?を把握することが出来ます。
ドイツサッカーのディフェンス戦術—ゲーム分析からトレーニングフォームまでスペースの認知
味方と相手のポジションと合わせて見ておきたいのがスペースがどこにあるかという事。相手の逆をとって前線のスペースにパスを出せれば大きなチャンスが生まれます。攻撃時にはディフェンスラインの裏の大きなスペースだけでなく、ペナルティエリア内にワンツーなどで侵入できるスペースを把握しておくことで、相手の脅威となるプレーを速いスピードで実行することが出来ます。特にゴール前では足元のパスばかりでは大きなチャンスは生まれません。瞬間的な判断だけでなく、事前にどこのスペースを使えそうか把握しておくことでゴール前のプレーの幅が確実に広がります。
「サッカー」とは何か 戦術的ピリオダイゼーションvsバルセロナ構造主義、欧州最先端をリードする二大トレーニング理論 (footballista)首振りを習慣化するには!?
首振りを習慣化する為には、まずは普段のパス練習から首を振って自分の背中側を見るようにすることです。まだトラップの技術が拙く、首を振れないというプレーヤーはボールを手でキャッチボールして、その際に首を振る練習をすることをお勧めします。ボールを手で扱うことで余裕が生まれ首を振る習慣を付けることができます。
あとは試合で自分の背中側の状況を首を振るようにアドバイスを続けることが重要です。局面ごとに事前に何が見えていたか?の問いかけをしてあげることで、子どもが認知の大切さに気付いていくと思います。
また、子どもにとって難しいのは周りの状況を認知するタイミング。攻撃時において首を振るタイミングはボールに関与していない時と自分へのパスが転がっている時(次のプレーをすぐに判断したい時)の2回あります。守備時においてはボールに関与できない距離感で、相手がボールに触れない(プレーできない)時が首を振るタイミングです。
気を付けたいのは、試合中に何度も首を振るのは大人が考えるより難しいという事。言われてすぐにできるようにならないので、習慣付くまで数カ月はじっくり待ちましょう。