今回もU10の練習試合の観戦レポートです。3年生までは個人技任せでサッカーをやっていたチームが多いので、組織としての攻撃・守備を行うようになるU10世代は魅力と課題が入り混じる面白い試合展開が見られます。
組織的な攻撃への移行の難しさ
ディフェンスラインからビルドアップしてチーム全体で組織的な攻撃を本格的に取り入れるようになるのがU10世代。もちろん、もっと早くから取り組んでいるチームもありますが現在のジュニアサッカーを見ていると多くのチームがこのくらいの時期かなと思います。
個人技任せのスタイルから組織的な攻撃に切り替えていくことは口で言うほど簡単ではありません。試合中のプレッシャーが速い中で、パスを繋げと言われても多くのチームで3本連続でパスが通れば上出来なのではないでしょうか。
組織的な攻撃への移行が難しい理由は、個人技任せのサッカーでは養えない能力があり、それが組織的な攻撃を行う上で必要な要素になるからです。
また、難しい理由はもう一つあります。個人技任せのプレーは1人でできますが、組織的攻撃はチームの全員ができないと機能しません。(半数以上のメンバーができればある程度形にはなりますが、必ず穴ができてしまいます。)チーム全体のレベルを上げなければ試合中に実行することができないのです。
では、ジュニア世代は個人技だけやらせればいいのではないか?という意見もあるでしょう。
日本では個人技=ドリブルのイメージがありますが、それだけがサッカー・個人技ではありません。サッカー・プレーの本質を理解し実行できる能力がジュニア世代から必要なのではないでしょうか?
U10世代 組織的攻撃を実行するのに足りないもの
多くの試合を観戦する中で、この世代が組織的攻撃を実行する上で課題だと感じることは大きく4つあります。
課題1 ボールの持ち方 2 視野 3 サポート 4 判断・プレーのスピード それぞれについて解説していきます。
ボールの持ち方
1つ目の課題はボールの持ち方です。ドリブルだけをやってきたジュニアプレーヤーの多くはボールの持ち方や置く位置に問題があるケースが多いです。
問題のある持ち方というのは身体の中心の足元にボールを置いてしまうケース。左右の足でどちらにもいけるのでドリブルをするという目的だけでいえば安定するのですが、スムーズに素早くボールを蹴ることはできません。
パスは味方とのタイミングを合わせることが重要である為、常にパスを出せる利き足の前にボールを置く必要があります。
視野
ドリブルばかりしていると視野が狭くなる傾向があります。組織的攻撃をする上でプレーヤーの視野の広さというのは非常に重要になるため、周りが見えないプレーヤーがいれば早期に改善する必要があるでしょう。
特に顕著に視野が狭くなるシーンはドリブルしている時です。パスを意識したボールの運び方ができないので、ドリブル中に顔が上がらず、周りがパスコースを作っても見えないというU10のプレーヤーは多くいます。
最低限出来て欲しいのはドリブル中に顔を上げること。これができなければ味方のタイミングに合わせてパスを出すことはできませんし、周りが見えていない味方にはサポートにも行きにくくなります。
また、U11へ上がる前には「自分の背中側の状況」と「逆サイドの状況を」事前に把握できていることが望ましいでしょう。
サポート
個人技でのサッカーになれてしまうと、味方がドリブルで抜くのを止まって見ている時間が当たり前になり、サポートのスキルはまったく成長しません。
サポートの距離、角度、タイミングが悪く、「パスが繋がらない」「パスが繋がっても状況が変化しない」という現象がこの世代では多く見られます。
中でも一番気になるのはサポートする距離が近すぎること。パスの出し手をマークしていた相手ディフェンダーがパスの受け手にそのままプレッシャーに行けるような距離感でサポートしてしまうケースが散見されます。近い距離感がすべて悪いわけではないですが、目的や次のプレーを意識したサポートはほとんどできていないという印象です。
判断・プレーのスピード
まずはドリブルから入ろうとするプレーヤーや、とりあえず足元にトラップしようと考えている(何も考えていない?)プレーヤーがまだまだこの世代には多く、判断・プレーのスピードは非常に遅いと感じます。(プレッシャーをかけるスピードはU10ともなれば結構速いので、そのスピードに追い付かなくなるという印象です。)
普段から次のプレーを意識してボールをもらうことや、複数の選択肢を持ちつつもダイレクトやツータッチでのプレーを増やしていくことで判断やプレースピードは上がっていきます。
組織的攻撃の難しさはこのようなプレーをチーム全員で行えるようにならないと機能しないという事。チームの底上げの為にも普段の練習から上記課題を解決できるようなメニューに取り組むと良いでしょう。