サッカーにおいて重要なサポート
当たり前ですがサッカーは1つのボールを使い、11対11(ジュニア世代であれば8対8)で行うスポーツです。ゴールキーパー含むとフィールドには22人プレーヤーがいる為、ボールを持っていないプレーヤーは常に21人存在します。90分の試合で1人の選手がボールを持っている時間は1~2分程度(試合時間の1.1%~2.2%)と言われていることから、ボールを持っていないときのプレーがいかに重要かということが分かります。
攻撃においていえばドリブル、シュートの練習も大事ですが、それと同じくらい味方をサポートする動きを覚えることも大事です。それができるようになれば、チームとしてボールを奪われにくくなるので攻撃の回数は確実に増えます。
日本のジュニア世代の練習は1対1やドリブルにフォーカスしすぎている印象がありますが、サッカーは11対11の戦い。グループでの基本の動き方、崩し方を理解できないと上の世代では通用しなくなるのではないでしょうか。
最速上達サッカー オフ・ザ・ボールサポートの目的は何か?
ボール保持者のサポートに入る前に目的を明確にしておく必要があります。チャンスととらえて攻撃的なサポートをするのであれば、前進する位置でスピードアップしてサポートに入る、自分がワンタッチしてシュートを打てるスペースを確保してサポートに入るなど次のプレーをイメージしながらサポートに入ることが必要です。
ボール保持者が囲まれている場合には、広いエリアにボールを逃がす目的を持ってサポートに入る必要があります。
大事なことはサポートをすることが目的にならないこと。ボール保持者のサポートに入って何がしたいのか?を意識することで次の章で紹介するサポートで重要な3つの要素が活きてきます。
すぐできる! サッカー オフ・ザ・ボール (学研スポーツブックス)サポートで重要な3つの要素
ボール保持者へのサポートで重要な要素は「距離」「角度」「タイミング」です。このどれかが1つが欠けているだけで適切なサポートが出来ていない状態になってしまいます。
サポートの距離
1つ目の重要な要素はサポートの距離。ジュニア世代で気になるのは前進をしない守備的なサポートの際に距離が近すぎることです。
囲まれている状態を抜け出したいときや、後ろにボールを戻す際にサポートの距離が近すぎると、パスを出した際にボール保持者にアプローチしていたディフェンダーがそのまま付いてくることになります。
そうなるとサポートに入ったにもかかわらずスペースが無くなり、状況が悪化する可能性すらあります。しっかりと目的(広いサイドへ展開するなど)を持ちながら、それを実行できる適切な距離でサポートに入りましょう。
攻撃的なサポートにおいては、ワンツーで狭いスペースにトップスピードで入っていくこともあるため必ずしも遠い距離である必要はありませんが、ボール保持者のマーカーがそのままついてこれるような意味のないサポート(狙いがあれば構いませんが。)の距離は極力取らないようにしましょう。(攻撃はワイド、守備はコンパクトが基本です。)
サッカーの戦い方 [ディフェンダーとの駆け引きに勝つオフ・ザ・ボール] (マルチアングル戦術図解)サポートの角度
2つ目の重要な要素はサポートの角度です。サッカーではトライアングルを作ってサポートしようとよく言われますが、角度がなければトライアングル作れません。
ジュニア世代において角度を付けてサポートができない特徴的なシーンが2つあります。
1つ目のシーンはフォワードに向かって直線的に中盤やサイドバックのプレーヤーがドリブルしてきたとき。そのままのポジショニングでは角度が付かず(距離も近くなり)意味のないサポートになってしまいます。ワンツーを狙えるようなシチュエーションであればいいですが、それ以外の状況であれば角度をつけるために横にポジションをずらすことが効果的です。(専門的に言えばレーンを変える)
2つ目のシーンはディフェンスラインや中盤でサポートの位置がボール保持者の真横になってしまうシーンです。前進をするのか一度後退させる安全なサポートをするのか目的を明確に決めて、ポジションを取る必要があります。
真横でサポートをしてしまうと、「自分の前にプレーできるスペースが少ない」「インターセプトのリスクが高まる」「インターセプトされたときにカバーが遅れる」など多くのデメリットがあります。1.2歩のポジショニングが重要なサッカー。そのあたりを意識しながら状況が変わるたびにサポートの位置を変えていきましょう。
ストラテジック・サッカー 分析と観戦術 プロフェッショナルの視点 (コツがわかる本!)サポートのタイミング
最後の重要な要素は一番難しいサポートのタイミングです。これが合わずにパスが通らない、マークにつかれてしまうというのは大人のサッカーでも頻繁に起こります。
ジュニア世代においてはボール保持者がパスを出せないとき(体勢やボールの位置的に)にサポートに入ってしまい、自らにマークがつかれてしまうという事が多く見られます。
また、現代のジュニアサッカーの試合ではサポートの技術がなかなか育たないとも感じています。ドリブルばかり教えているからか、とにかくパスが出ない(サポートに行っても意味がないと感じてしまう)、パスを教えないからトラップができない(2タッチ目で蹴れるところにボールを置けない)ので、試合中に適切な距離、角度、タイミングでサポートをする機会はほぼないと言えます。(もちろんすべてのチームではないですが。)
高学年になる前にはサポートの原則を理解して実行できるようにはしておきたいですね。
サッカークリニック2020年9月号 (ポジショニング大改革)