ジュニアサッカーの指導者にお勧めの書籍
今回、ご紹介する本はFootball PRINCIPLES~躍動するチームは論理的に作られる~ 岩政大樹・著です。
鹿島アントラーズで長く活躍し、日本代表にも選出されていた岩政大樹元選手。現役時代は得意のフィジカルを前面に出してプレーする印象がありましたが、この本を読むとその印象は必ず覆ります。場当たり的な指導になってしまいがちなジュニアサッカーの指導に今必要なサッカーの原理・原則の理解が進む一冊です。
紐解かれるロストフの14秒
冒頭の第一章、ロシアワールドカップで日本がベルギーにカウンターによるラストワンプレーで失点し敗れた「ロストフの14秒」が、サッカーの原則をベースにして紐解かれます。
ロストフの14秒を語るときには起きた事象やあるシーンだけを切り取り、あれはこうするべきだったと議論されることはありましたが、岩政氏の解説はサッカーの原則という視点からこの失点に関わった選手たちの思考を紐解いていくようなもので、かなり衝撃的な内容でした。 正直ここまで深い考察は今まで見たことがないですね。
この章では、なぜあのカウンターが決まったのか?という話から、日本とベルギーの本当の差は何か?日本に何が足りないのか?を深く理解することが出来ます。
ジュニアサッカーの指導者は原則を理解しているのか?
この一冊を読んで感じたことはジュニアサッカーの指導の多くが、起きた事象(現象)についてのコーチング??となっていること。
「今のはディフェンスにいかなきゃだめだ!」「もっとボールをもらいにいけ!」「なんでシュート外すんだ!」という声が試合中、ベンチから聞こえてくることが多いですが、それでは何も解決しないということをこの本は理解させてくれます。
また、子ども達に1から10まですべてを教えてしまうと、思考を奪ってしまうため判断ができない選手になってしまいますが、「何を考えさせるのか?」ということにもフォーカスしていく必要があると感じました。もちろんすべての指導者ではないですが、教える側が「考えること」「サッカーの原則を理解する努力」をせずに選手に丸投げしているように感じることもあります。
例えばミスが起きたときに、サッカーの原則を理解できていないことが原因なのか?選手の判断の間違いや能力の足りなさが原因なのか?をしっかりと考察するべきだし、もちろんそのようなミスが起きるのは指導者の力量不足だと捉えるべきです。
どのように子どもたちに伝えていくべきか?
子ども達の更なる成長をサポートしていくためには、指導者がサッカーの原則を理解した上で、どのように子どもたちに伝えていくのかが非常に大事になります。
この本を読む前から感じていたことですが、子どもたちの判断や考える力を育みながらサッカーの原則を理解させるには下記2点が重要なポイントになると思います。
- 原則や判断基準は教えるが、選手に判断は任せる。
- 原則や判断基準が自然と身につくように練習をオーガナイズする。
実際の試合でのコーチングを見ていると、起きた事象・結果に対してただ怒鳴ったり(何かの意図が無ければこれは論外)、判断を奪ってしまうようなコーチングをしてしまったり (自分もしてしまうこともあるので反省)することが多いのが日本のジュニアサッカーの現状だと思います。
また練習においては ドリブル練習や1対1、パス練習、目的の無いゲームに終始するケースも多いのではないでしょうか?今の子どもたちはボールを扱うという点だけ見れば圧倒的にうまい。サッカーの原則や判断基準を理解させつつ、その場面で使えるサッカースキルを磨けるように練習をオーガナイズすることができれば飛躍的に成長する可能性を秘めていると思います。
そんな色々言っている私もまったくの勉強不足。世界に羽ばたく日本の選手が増えるために指導者の努力が必要だと痛感させられる一冊でした。
サッカーの原理・原則の理解の浸透が世界への道か!?
海外サッカーを観戦するたびに世界トップレベルの国・プレーヤーたちのプレースピード、判断の速さ、的確なポジショニングに驚かされていました。しかし、この本を読んで理解できたことは、ほとんど無意識でやっているのではないかというそのプレーの数々は、サッカーの原則が土台として叩き込まれているからできるということです。
文化とか歴史とか抽象的かつ短期的には変えられないワードに逃げずにサッカーの原則をプレーヤー・指導者に浸透させることが世界に追いつく近道なのではないかと感じました。サッカーに関わるすべての方に読んでいただきたい一冊ですね。